MVで見るicon girl pistols10年史 No.9「ペパロニの帰宅方法」

9.ペパロニの帰宅方法 - Pepperoni's Homecoming Method -

バンド史における最新作となっているアルバム「モザイクという名の男」に収録された楽曲。アルバムリリースは2016年で、MV公開が2017年なので、こちらも制作に1年かかったことになる。とはいえ撮影はたったの1日。監督は初期3作を担当してくれたマリナ・ナカガワである。

マリナはicon girl pistolsのライブ会場で出会ったクリスの友人リースと結婚し、2017年にはリースの母国イギリスに移住することになっていた。その区切りとして、旅立ちの前に再び我々のMVを作りたいという彼女の気持ちとこちらの気持ちが合致、数年ぶりに制作を依頼することになったのだ。

「ペパロニの帰宅方法」はquizmaster時代に発表した「スナフキンの家出方法」と対になる曲である。
帰宅、帰郷などの言葉には安心感を与えるムードがあると共に、ひっそりと敗北感、諦念のイメージが隠し味のように潜んでいる。果たして意気揚々とホームに引き返せる人は世界にどれくらいいるのだろうか。何事かを成し遂げ、それが世間に誇れるものだったとして、幼き頃の自分にちゃんと説明のつけられるものなのか。そんな風に考えると単純に成果があれば楽しい帰宅になるわけではない。

iPodとハーモニカだけをぶら下げて出発した少年は、数年後ペパロニという相棒と共に帰宅することになる。それは無念の帰宅なのか、それとも凱旋なのか、はたまた再出発への準備なのか…

撮影は中野辺りのスタジオでグリーンバックの前で行われた。昔から変わらぬ、素材は1日で撮り切るマリナのスタイル(これはバンドにとってめちゃくちゃありがたい)で、今回は事前の絵コンテミーティングも無く、ただマリナの頭の中にある素材を撮り集めていく作業であった。

なので、撮影が終わってもどんなものに仕上がるのか全く分からない。しかも彼女サイドも仕事が忙しくなり、特にMVに関しては音沙汰無しに。MV制作中であったことを忘れるくらい静かに1年が経過した頃、完成版のデータが届いたのである。

それは10年の歴史の中で明らかに成長を遂げた、マリナワールドの真骨頂とも言える作品だった。鮮やかなのにクール、ロックなのにファンタジック。混じり合わなそうな要素をいとも簡単に混じり合わせて形にすることが出来るのは、彼女が持つ特別な才能なんだと改めて気付かされる作品となった。

なお、ある時「バンド史上最高の出来事は?」というインタビューに対して、バンド公式として、マリナとリースの結婚と答えている。自分たちのライブをきっかけに出会ったカップルが国籍を超えて結ばれるなんて、そんなに嬉しいことはないからだ。2人に末永くお幸せに!と思うと同時に、来たる2018年3月21日のバンド10周年イベントが大盛況となって、「バンド史上最高の出来事」を更新してくれることを期待していますチャンチャン。
ss

▪︎icon girl pistols 10周年記念特設サイトはコチラ↓
http://icongirlpistols.com/10th_anniversary.html

ペパロニの帰宅方法

北風がやってきて僕に道を尋ねた
僕は指をさしてあちらに帰りなさいと言う

一人きりで旅を続けるのは時に
二人よりも迷いやすい
ペパロニを連れて行く

悲しい事はお別れでも蓄え無しなことでもなく
あなたが帽子の被り方を忘れてしまいそうなこと

ペパロニはそう言って僕を膝に乗せ
谷底の小さな家を取り壊したところさ

生まれたあの街じゃ誰もが自分こそ
正しいと思っているそれにうんざりしたんだ
だけどだけれどそれは人の世の慣わし
子供がいつの日にか子供を作るように

新幹線が音も立てず夜の小川をのぼってくよ
僕の涙袋はワインガムでいっぱい

美しいことに気付かなくなったら
もうお終いね
それでも愛しているわ

誠実そうな羊飼い故郷に帰ると言います
僕は電気の街で暮らす事に決めたのです
汗を流し働き木陰に休むような
人にお成りなさいと彼女は滑り歩く

森を抜けて一本道をひたすらに登ろう
カトレヤの咲き乱れる家に向かうのよ

ペパロにはそう言って僕を膝に乗せ
日曜日の朝に振り出しに戻ったところさ

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